2022.05.16
認知症の早期発見につながる検査法「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発され、認知症医療の第一人者として知られる精神科医 長谷川和夫先生が昨年11月にご逝去されました。
そんな「長谷川式スケール」と聖風会は切っても切れない関係にあり、開発者である長谷川先生は聖風会診療所の所長も務めて頂いており、2009年6月には「認知症介護」に関する研修でご講義頂きました。
今回は長谷川和夫先生を偲び、バックナンバーの法人広報誌「クローバースマイル vol.5」で特集いたしました「聖風会の今昔物語(長谷川式スケール)」を法人広報誌『クローバースマイル』 ~番外編~ vol.2として掲載いたします。
司会 長谷川先生と聖風会の出会いを教えていただけますか。
長谷川 昭和43年に特別養護老人ホーム足立新生苑に私の恩師・新福尚武先生と行ったのが始まりです。
司会 どうしてその時に足立新生苑に足を運ぶことになったのでしょうか。
長谷川 私は当時、東京慈恵会医科大学の精神科で医局長を務めておりました。ご縁があり、足立新生苑のご利用者の方を対象に、健康状態の調査を行うことになりました。そこで、調査を進めている時に新福先生が「これからどんどん高齢化して、長生きする人が増える。どんな医者でも認知症のことを診る時代が来るかもしれない、その時にどの医者が患者を診ても認知症を判断することのできるものさしを作りなさい」と言いました。当時、認知症は精神科の医師のみが診断を行っていましたが、現在では多くの医師が診断することができるようになりました。このような時代が来るのを新福先生は予見していたのでしょうね。
司会 新福先生は長い目で、認知症のこれからを見ていたのでしょうね。「長谷川式認知症スケール」を作るにあたり、特に留意した点などはございますか。
長谷川 難しい質問項目は入れすぎないよう、日常の会話の中で用いられるものを入れて質問項目を考えていきました。しかし、認知症の方と認知症ではない方の区別をするのに一定の難しさは入れなければならない点に苦労しました。「100から7の引き算は簡単だけど、93から7の引き算は難しいよね」とか、「認知症の特徴は『これを記憶してください』と言って、すぐに聞けば思い出せるけれども、数問挟むと忘れてしまう傾向があるからヒントを出して正解すれば1点にしよう」と当時の研究チームで考えました。
慈恵医科大学の中でチームをつくりやっていたのですが、仲間の後押しもあり、名前を「慈恵医大式認知スケール」ではなく、「長谷川式認知症スケール」となりました。