社会福祉法人 聖風会

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クローバースマイル

2023.12.25

全社協「月刊福祉」12月号に掲載 特集『外国人とともに「福祉」で働く』

『10年後の介護現場を考えた計画的組織体制づくり』

全国社会福祉協議会「月間福祉」12月号に特集「外国人とともに「福祉」で働く」として、聖風会の外国人介護人材受け入れの仕組みが福祉分野の実際の事例として掲載されました。

記事は聖風会 法人本部事務局 課長の吉田浩一が執筆しました。

以下の内容は「2023『月間福祉』12月」に掲載された内容となります。

外国人介護職員を受け入れ始めた経緯

2017年以降、介護職員の新卒採用が困難となる中、「日本では2025年には約243万人、2040年には約280万人の介護職員が必要となり、介護職員が32万人以上不足する。」というショッキングな数字が発表された。国内の約6割以上の福祉事業所が介護職員の人手不足が深刻化しており、東京都内にあるとはいえ聖風会でも介護人材不足は危機的状況にあった。
今まで通りの日本人だけの採用では、いずれは職員不足に陥り事業停止が訪れるのではないかと危惧した。では、この状況を克服するためにはどうすれば良いのか?新たな人材を海外から日本に招き、日本で介護を学んで働きたい外国人を支援・採用していこうと受け入れ準備がスタートした。受け入れを検討する中で、どのようなスキームで外国人介護職員を受け入れる事が当法人に向いているのかを、EPAや特定技能、技能実習等について検討した。その中で、聖風会が大切にしてきた「介護人材育成」、「介護の専門性」が本当にできる外国人介護職員の受け入れは何かについての議論を交わした。その結果、日本の素晴らしい介護の専門性を理解し、ゆくゆくは母国の介護リーダーとなる人材を育てたいという想いから、介護留学生支援をベースに外国人介護人材の受け入れが動きだした。

受け入れ決定後の体制つくり

受け入れ決定後、先ず法人として行ったことは、中長期計画にしっかりと外国人介護職員の雇用計画を盛り込んだ。理事会承認後は、理事長より全職員に向け、何故、当法人が外国人職員を受け入れるのか、前向きなメッセージの配信を行った。外国人職員の受け入れは、担当者や管理者だけが知っていれば良いのではなく、「組織主体」で取組むことが大切である。そのためにも、①施設長➡各サービス責任者➡スタッフへ経緯を丁寧に説明。②法人全体でも経緯についての説明会を開催。③広報担当職員・採用担当職員を対象とした研修の実施。④各施設受け入れ担当スタッフとの意見交換会の実施。また、並行してご利用者やご家族への説明会を行い、当法人が外国人介護職員を受け入れる経緯と今後の体制などについての理解を求めた。具体的には、家族交流会で当該職員を紹介し、ご利用者家族とのコミュニケーションを築く場を設けた。
聖風会では、2017年から外国人留学生支援、介護職員の採用を始め、2023年10月1日現在、留学生10名、在留資格介護23名・特定技能5名・EPA1名名が働いている(表1・コロナ前計画人数)。

受け入れ後の支援

外国人介護職員との信頼関係つくりのスタートは入職前の面接から始まっている。日本人と違い、イエス・ノーがハッキリしている外国人には、勤務地や勤務条件、賃金等に関する処遇については必ず明文化し、出来れば日本語と母国語の両方で通知、説明する事が望ましい。最初の段階でのズレは大きくその後の信頼関係に影響を及ぼすので、細心の注意が必要である。特に、社会保険制度や年金制度、住民税等のない諸外国から就労に来ている方がほとんどなので、実際の手取り額を伝える事が大切である。日本での生活をする上で様々な手続きも必要となるが、一緒に行う事が信頼関係を築く上で、とても重要となる。具体的な生活支援としては、住民票やマイナンバーの申請・銀行口座の開設・日本でのゴミ出しのルール・電車の乗り方や交通ルール・体調が悪い際の病院への付き添い(家族的な支援を心掛ける)。更にビザの更新申請の援助、住まいの契約等、何でも相談できる同僚的な支援も大切である。
組織全体で取組む際には、全体の状況を統括する担当者とは別に、各施設で中心となる担当職員を配置し、どの施設で問題が発生しても、集約できる体系を作っていく。この様な体制が整う事で、問題が起きた時、施設担当者から法人担当者まで情報共有も素早く、問題解決に向けて迅速な対応が可能となった。
言葉はもちろん、習慣や価値観といった文化の異なる外国人介護職員と一緒に働く中では、問題や課題は出てきて当然である。しかし、協働するためには、お互いの文化を知る事で解決する事もできる。例えば日本人は時間を厳守し、時間管理を大切にする社会である事を説明する。時間にルーズでは問題がある事も丁寧に伝える。当法人の一施設では「異文化交流会」(写真1)を開催し、外国人介護職員が母国の文化や習慣を話す会を開き、互いの理解を深める事を意図的に行っている。
介護現場での支援としては、留学生の段階では、日本語での表記では理解できない事もあるので、母国語の説明シール(写真2)を張るなどし、少しでも安心して介護の勉強に取り組めるよう支援している。

また、外国人介護職員が抱える大きな課題として、日々の記録や状況報告書等、ご利用者に関する文章を書くという事がある。この問題をクリアするために一施設では、介護の専門用語と日常使う日本語が繋がるようなミニテストを作成し、介護用語を覚える支援を行った。また、状況報告を書く練習としては、介護事故などが起こった状態の写真から状況報告書を作成する練習を行う事で、日本語での記録がスムーズに書く事が出来るよう支援した。
留学生・外国人介護職員共にコミュニケーションの基礎となるのは日本語能力である。法人内に日本語指導のチームを作り、定期的な勉強会(写真3)を勤務時間内に開催する事で、収入面でも心配することなく学べる場を提供した

受け入れ後の効果・今後の課題

2017年からスタートした外国人留学生支援や、外国人介護職員を受け入れた事で、当初あった不安や問題を超える効果を得ることが出来た。
新卒採用の部分では、支援留学生がいる事により、計画的な雇用確保ができる。外国人介護職員の採用も、ソーシャルメディアを通じ、外国人職員が広報担当者的な活動をしてくれる事で、自費留学している外国人からの応募が安定する。
日々の業務や研修では、日本人職員が、コミュニケーション能力の高い外国人から言語以外のコミュニケーションの大切さや、日々行っている介護技術を伝わりやすく指導する方法などを見直すきっかけにもなり、個々のスキルアップに繋がった。また、自身の職場環境内に外国人職員がいる事で、日本の介護がグローバル化し、自分たちが世界でも高い水準のケアを行っている自信に繋がる。
外国人介護職員の採用は、単発的な事業ではなく、中長期的な事業となるため、資金面の確保はもちろんのこと、現場の組織体制整備や、指導職員の育成も継続的に行い、属人的な対応とならないよう法人内の改善課題はたくさんある。
更に、法人だけの活動だけでは、外国人介護職員の安定した雇用は続かない。今後の課題は日本語学校や養成校、介護に携わる産学が連携し外国人介護職員を日本で育てる環境整備も必要ではないだろうかと考える。
最後に、聖風会は日本の「介護」が「KAIGO」として、その国の介護のスタンダードになるように、今後も活動していく。

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