2022.05.30
法人発祥の地である足立区花畑に1968年に開設された足立新生苑は2018年に50周年を迎えました。
『足立新生苑30年史』に引き続き、後世にこの聖風会、足立新生苑の歴史を残すことができないかとの思いから、主に3 0周年以降の出来事である、足立新生苑のユニットケア導入に至った経緯、導入後の様子、職員の思い、そして、「最高に価値あるものをすべての人に」という法人理念のもと、どのような思いで、聖風会の足立新生苑の歴史が築かれてきたのか。足立新生苑5 0 周年記念誌として、『クローバースマイル』特別号にまとめました。
ブランディング委員会のピックアップシリーズとして、数回に分けて掲載していきます。
2002(平成14)年、足立新生苑にユニットケアが導入された。導入するにあたっては一筋縄ではいかず、幾度となく職員で検討会議が行われたり、先進的な施設の見学や実習に行ったり、勉強会に参加したりなど、苦労があった。ここではユニットケア導入に至る背景と、経緯を紹介していく。
1998(平成10)年に足立新生苑の定員が150名から220名に増員となり、ショートステイを合わせると236名と大きな施設に変わった。増床に伴い、建物も新しくなった。古い建物(別館)は主に4人部屋で職員の動きが分かりやすく、ご利用者の変化にも気づきやすい環境にあった。しかし新しい建物(本館)は個室と4人部屋があり、広くなった分職員の動線も長くなり、次第に職員、ご利用者共にコミュニケーションが取りづらくなっていった。職員も努力しているのにご利用者対応は低下していると感じ、「自転車で移動できたら良いのに…」と愚痴をもらすほど、苦労をしていた。
建物が広くなったことにより、1人の職員が多いフロアで60名ほどのご利用者の把握が必要となった。新人職員は「私にはこのフロア担当は務まらない」と涙を流すこともあり、少ない指導職員も頭を悩ませていた。こういった状態で職員は日々疲労感・ストレスが増していった。何とか職員の動線を短くし、職員のストレスを軽減することはできないか、そして一番はご利用者と過ごすことのできる時間を増やすことが出来ないか、そんなときに出会ったのがユニットケアであった。
また、ある日のこと「ご利用者が楽しみにしている食事や入浴が、職員にとってはただの仕事としか考えられなくなっているこの生活はおかしいのではないか」と、職員から疑問の声があがった。ご利用者にとっても、そして職員にとっても、居心地が良いと思える空間とは、法人理念にある「その人がその人らしく生きること」を体現した空間ではないのか。今、職員でそれを実現しようとできていないのではないか、連日職員の間では会議が行われた。
「何とかこの状況を打破する方法はないだろうか―」そんな時に、出会ったのがユニットケアの取り組みであった。