2023.09.04
『私たちは社会福祉法人聖風会の虐待防止に関する考え方を共有し、現場レベルで不適切な対応を指摘し、改善しあえる風土づくりに努めます。また、虐待を防止し、ご利用者の尊厳を保持することで、その人らしいイキイキとした生活へのサポートに努めます。』
私たち聖風会職員としての虐待防止における行動指針です。
「高齢者虐待は絶対に許さない」という法人スタンスのもと①虐待防止行動計画、マニュアル、虐待の芽チェックリストの作成と見直し②クレドカードの作成③虐待防止研修の企画、運営等を取組み課題とし、法人内のプロジェクトのひとつとして、「虐待防止プロジェクト」が立ち上げられました。
このシリーズ3回目となる今回は前回に続き、8月22日に開催した「指導職・管理職虐待防止研修」で報告した「虐待の芽チェックリスト」の分析結果について、ご紹介いたします。
聖風会では人事考課の時期に合わせ、年2回、「虐待の芽チェックリスト」を全職員対象に実施しています。「虐待防止担当者」である各施設長が集計して、「虐待防止プロジェクト」に提出し、それらを集約して分析、改善につなげるようにしています。上のグラフは法人全体(特養など入所型施設の職員)の以下の項目についての結果です。
①「他の職員に仕事に関わる相談ができない等、職場でのコミュニケーションがとりにくくなっていません。」
②「他の職員が行っているサービス提供・ケアに問題があると感じることがありませんか?」
③「不適切な状況があっても、見て見ぬふりをしていません。」
④「ワークエンゲージメント(※)」(令和4年度「ストレスチェック」結果より)
※仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる
⑤「エンプロイエンゲージメント(※)」(令和4年度「ストレスチェック」結果より)
※従業員が会社に対して抱く愛着を指す言葉であり、会社への帰属意識や理念・ビジョンへの共感、貢献意欲、職務満足などを内包する概念を意味します
私たちプロジェクトメンバーはこのa~cの項目は連動していると考えています。また、併せて行っている「接遇に関するチェック」や「高齢者虐待のセルフチェック」の項目、さらに今回は年1回行っている「ストレスチェック」の結果も併せて、クロス集計を行い、以下の様な分析をしています。
(1)「職場でのコミュニケーションが取れていると他の職員が行っているケアに問題があると感じることが少ない」
職場内でのコミュニケーションが「良好」であると、他職員のサービス(ケア)に問題があると「感じることがない」職員が7割と高い割合でした。職場内の良好なコミュニケーションはサービス(ケア)の質を担保していると分析できます。しかしながら、職場内でのコミュニケーションが良好という関係性から、他職員のサービス(ケア)の質の判断が甘くなる可能性にも留意が必要です。
(2)「職場でのコミュニケーションが取れていると、他の職員が行っているケアに問題があると感じた場合、見て見ぬをふりをせずに伝えることができる」
今回の結果も、前回同様に「職場でのコミュニケーション」が「良好」とした職員の内、「他の職員のケアに問題がある」と「感じることがある」とした職員の割合は3割弱、そして、それらの内、「不適切な状況に見て見ぬふりをしている」かどうかの項目で「していない」とした職員は8割でした。前回の分析では集計対象が正職員のみであった為、「正非での意識の差が反映され、正職員に関しては仕事上の良好な関係性を構築し、「馴れ合う」ことなく、信頼関係の下、不適切な言動に対して指摘し合えているのではないか」と分析しましたが、今回は非常勤職員も含まれており、前回とほぼ同値であり、「正非問わず、他の職員が行っているケアに問題があると感じた場合、見て見ぬをふりをせずに伝えることができると言える」と分析しました。
(3)「利用者に友達感覚で接したり、子供扱いしたりしていても自分では気づかない場合がある。」
『言葉使い:敬語・丁寧語を使えています』で「できていない」とした職員は5%低下しましたが、依然として全体の約5割と高い割合でした。『友達感覚で接したり、子ども扱いしたりはしていません』の項目で「していない」とした職員も漸減傾向ですが、依然として約8割と高い割合でした。敬語・丁寧語が使えていないと思っているのにも関わらず、友達感覚で接したり、子ども扱いしたりしていないと思っている職員が多くおり、「友達感覚」の捉え方に差異が生じている可能性が高く、改善しているとはいえない。「友達感覚、子ども扱いしている」ことに気が付いていない職員が依然として多くいる可能性が考えられます。聖風会行動指針「利用者への姿勢」のひとつ、「高齢者を人生の先輩として敬い、常に丁寧な言葉遣いで接します」が浸透していないではと推察します。
(4)職場でのコミュニケーションが取れていると、仕事に誇りとやりがいを感じ、且つ、職場に愛着を感じ、定着率が向上する。
ワークエンゲージメントとエンプロイエンゲージメントについては一方の数値が高いと、もう一方の数値も同じく高くなっており、相関関係性にあると推測されます。また、職場でのコミュニケーションが数値上、「良好」との結果である部門において、この2つのエンゲージメントは高い傾向にあります。コロナ禍において、コミュニケーションの量低下が課題であり、職場におけるコミュニケーションの重要性を改めて認識し、コミュニケーションの質を高めるための取り組みが引き続き求められると感じます。